ZEEBRAがテレビのバラエティに顔を出し、降谷建志がdisられる頃、私はまだ高校生。
「カラオケで歌う曲に関しては誰ともカブりたくない」と人一倍、ミーハー消えろと思っていた当時の私にとってラップソングというのは、浸るのにも歌うのにも最高の発明品だった。
高校生なりたての当初に聞いていたのは当然邦楽ラップ。
自分のまわりにこのジャンルに詳しい人もそれほどおらず、当時はテレビに出てくるような曲を中心に聴いていた。
洋楽ラップを好きになっていったのはもう少し後。
Eminemの「Stan」にヤラレた時からで、当時はリリック(歌詞)の内容も詳しく知らず、「いいトラックだなぁ」などと呑気もホドホドにしろよと思うほどだったが、少しずつ英語も読めだした頃に改めて歌詞を読んで衝撃を受けたものだった。
その頃から急にハマっていく曲も変わりだし、ラップをやるアーティストのバックボーンがリリックに乗っかってる、つまり、そのラッパー特有の苦しみや、それを乗り越えて掴んだ一筋の光を上手に歌詞に散りばめられている曲を愛すこととなる。
たとえば、Eminemに関しては「ダークストーリー・オブ・エミネム」を読んで、映画「8Mile」を観て、辛い家庭で育ちながらもマイク1本でスターダムにのし上がるその過程にとても感銘を受けた。
そんな私にうってつけの本が最近発売されたので、今回はその話。
BOOK
しかし、先ほども書いたように、私はそれまでは割とキャッチーな(ファンからすればヒップホップと呼ぶことも怒られそうな)日本語ラップばかりを聴いていた。
「学校へ行こう!」の「B-RAP HIGH SCHOOL」も毎週楽しみにしていたし、いま思えばこのジャンルを本当に好きな人にとっては、あの企画は半ば苦痛であったのかもしれないけども、そういう割と普通の学生だった。
だからこそ、こんなことに疑問を持ったりもした。
「なんでラッパーって、レペゼンレペゼン言いたがるんだろう。」
represent (レプリゼント・レペゼン)
~を代表する。レペゼン→レプリゼントを訛らせたもの
要は「レペゼン福岡」と言えば、「オレは福岡代表としてここに立ってんだぜ」というか、そんなニュアンスなのだが、当時は「それって、逆にダサくねーか?」と考えていた。
別にお前の田舎アピールしなくていいじゃん、お前はお前なんだろ?と。
なんでみんな場所替えるだけで同じコトばっか言ってんの?
みんなで似たような、オリジナリティのかけらもないダサいことしてんの?と。
しかし、この本には当時の自分に読ませてあげたい、こうした疑問へのアンサーがたくさん載っている。
それはAnarchy(アナーキー)の章だけを読んでも十分なほどに――。